ラッパと卸売りの話

 



11月納期のDeluxe Shirt、展示会サンプルはプルオーバーだけでしたが量産は前開きバージョンも作ることにしました。

それに伴い、前開き部分を縫うための金具をミシン屋さんに依頼していたのが出来上がったので引き取り。よく「ラッパ」と通称で呼んでいる金具。

はるか昔は、縫製工場さんが生産効率をよくするために作っていました。メーカーはいまいち、そんなものがあるともわからずパタンナーがパターンひいて、ラッパがあるだないだで良く揉めました。パタンナーさんからすれば「指示と1ミリ違う!広い!」とか言われて、工場からすれば「金具がこの幅なんだから!!」みたいなもめごとです。

余りにバカバカしいので、縫製工場時代には「部分縫い」と呼ばれる、この針幅・この金具でこういう風に縫えます、という見本をA4の厚紙に張り付けたものを作ったりしていました。

で、私は金具も作って支給。どうしてもこの幅じゃないとデザイン的にNGとか、強度的にNGとかあるので。わずか100枚、200枚。折って縫っても良いのでしょうが、昔の服と「同じ」じゃないと嫌な部分なので。

この金具がそれなりに良いお値段でこのタイプは5万以上します。昔は、この金具代が払えるか?にじまり、同じような価格のネームだったり、ちょっとお高い別注の紙袋代だったり。そういうものが来月払えるかな?払っちゃったら先大丈夫かな?とか心配しながら仕事してました。


で、ここから卸売りの話。本来卸売りは「ボリュームディスカウント」だから、「ある程度の量を買ってもらったら定価より安く売るので商売してください」が原則。その量を通称「ミニマム」と呼びます。枚数で指定するメーカーもいれば、金額で指定するメーカーもいます。

WORKERSの卸売りはこの「ミニマム」は設定していません。

私自身が、さっきの数万の金具、数万のネーム買うのすら悩むところからのスタートだったから、最初に「買いたいけれど買えない」気持ちがわかるからです。私自身、ほんのわずかしか買わないのに売ってくれた生地屋さん、部品屋さんにお世話になったし。(でも最初金額が少ないうちは現金で買ってましたし、今でも新規で取引してもらう仕入れ先さんは現金ですが)


ただ、誤解してもらいたくないのが、「ミニマム」が無いから、いくらでも仕入れられるという意味ではありません。あくまで「一緒に少しづつでも大きくなって、ある程度の規模になろうね」という事。逆に「大量に買うから安くして」も聞きませんし、大量に買う人でも断るときもありますし。人として対等にお付き合いできるのが第一なので。

カッコつけたメーカーの「わかってくれるお店さんに(お店は売れるものをわかる・わからないから先の問題もある)」とか「ある程度面で見せないとうちの製品は伝わらないで(君のメーカーが売れる製品作れれば自然とお店はいっぱい仕入れる)」とかそんなこと言う気はありません。