TCB・証言者矢部さん編

手前が矢部さん。TCBを服つくりの世界に戻してくれた人。
TCBに仕事教えてくれて、金が無いときは飯食べさせてくれて。
話を聞けば聞くほど良い人。

一度は洋服の世界をあきらめたTCB。彼を再び、生産の世界に戻してくれた矢部さんの登場です。矢部さんも今はAgilityという縫製工場をされています。

矢部さんのお話・・・・・・

矢部さん: 初めて井上君(TCB)を見た時の印象は一言で「汚い」。当時はバイクに乗ってて、着るものもボロボロのジーパンやジージャン、フライトジャケット。今よりだいぶ痩せてはいたけど、とにかく汚かったね~。

WKS: その後、矢部さんが一緒に働かれて覚えていることはありますか?

矢部さん: まず会社入って1か月後ぐらいかな?いきなり井上君が来ない。心配して電話すると「あ、今アメリカです!」。そういえば、会社勤めするときに「ためたお金で一度アメリカを見に行きたいんです」とは言っていたけど、だれにも言わずに行くとはな~。会社の社長も「あんなのは首だ!!!」って言ってたけど、アメリカからち~さなショットグラス一つお土産に買って帰ってきて。それで社長もコロッと許してしまってね。

矢部さんの工場にて。太さ違いすぎ!


WKS: 井上君らしいというか・・・

矢部さん: そう、社長だけじゃなく縫製のおばちゃんにもかわいがられたり。とにかく、人当たりの良いのが彼の良い所よな。おかげで、外注さん行くと話が盛り上がって帰ってこなかったり。

WKS: 彼の「ここが良かったな」という部分は?

矢部さん: やっぱり「縫う」という事に最初から興味を持って自分でやっていたこと。ある意味「縫う」という点に関しては、当時も教えてもらう部分があったし、今もそれは同じ。ただ、会社自体は量産工場では無いから自宅にミシンを少しづつ買って夜な夜な縫ってたよな?

TCB: それはワーカーズも同じですよね?

WKS: そうそう、児島に来た服が作りたい奴の第一歩は「家に工業用ミシン」

TCBの家写真が無かったので、WORKERSの昔住んでいた家の写真から
こういうミシンが普通に民家にあるのが児島スタイル

矢部さん: 夜縫い物して、徹夜で仕事へ。給料は全部ミシン代に消えて。飯代も無いからよく一緒に食べに行ったな。

TCB: ほんと、数えきれないぐらいおごってもらいました。

WKS: さすが、君は人に好かれるな~。それに矢部さんや勤め先の社長が良い人すぎる。勤めさせてもらった会社はどんな会社?

TCB: いわゆる「振り屋」に近い業態でした。東京のメーカーさんから仕事をもらい、それを児島はじめ地場の工場で作り納品する。パターン、生地、付属(部品)は工場で買う時もあれば、メーカーさんからの支給もあり。自分の想像で、児島には「工場」しかないのだと思っていました。そこに、自社ではわずかな生産設備だけもち、外注さんをメインに物を作って納めるという仕組み自体がとても新鮮でした。

WKS: そこでTCB自身は何を?

TCB: いわゆる「営業」がメインです。会社入ったばっかりの自分にも、社長や矢部さんが許してくれて東京に営業で一人で行かせてもらったり。もし今自分の会社に、当時の自分みたいなのが来たら矢部さんや社長のように同じ事が出来るかどうか?というと正直考えちゃいます。自由にさせてもらい、かわいがってもらい、感謝しかないです。

矢部さんとTCB井上君、ラッパを見ながら談笑?

WKS: で、数年たって矢部さんが独立され。TCBもその後を追うように関連会社へ・・・

矢部さん: 自分がまず独立して。ある日井上君が「会社辞めてきました!」って歩いて来て。当時、井上君は会社の車を借りて自宅から通ってたのでまずその晩、どうやって家帰るんだ?って。仕方が無し、知人に電話して余ってる車借りて、とりあえずの足を用意して・・・

WKS: むちゃくちゃですね、相変わらず。なんでそんな事したの?

TCB: 今思うと馬鹿なのですが。当時の勤め先の社長も自分で会社を興した人だったんです。自分が当時25-6。社長は同じ年の頃にはもう会社を興していた。そんな事を悶々と考えているうちに、まずは会社を辞めて、自分で何かをしたいという思いが募ってしまって・・・。でもこれが自分の甘さなんですが、だからといって明確なプランがあるわけでなく。まず、矢部さんに相談に行ってしまったんです。

矢部さん: 当時の井上君、ミシンはある程度そろっていたけれど仕事を受ける目途があるわけでも無し。

TCB: なので、矢部さんに頼んでもらい、今度は加工メインの会社に籍を置かせてもらいました。自分でもある程度、ミシンがあってできることがあるので、加工に付随した縫いの仕事をさせてもらったりしていました。

WKS: 矢部さん、最後にTCBのこれから、どうなってもらいたいですか?

矢部さん: 井上君とは一回り、12歳年が離れているんだよな。いつかは先輩に恩返しできるようBigに成ってください。

WKS: ありがとうございました!

次回はTCB・WORKERSの出会い編です。