WORKERSのボタンダウンシャツ。今では定番に成っていますが、それをどうやって形にしていったかのお話。
ボタンダウンシャツ。ある意味、デザインが完成され過ぎてしまっているので、何をどうデザインしてよいのか、最初はわかりませんでした。
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そのため、一番最初に作ったボタンダウンは最初から飛び道具でフロントラウンドデザインの隠しボタンダウン。「デザイン」というのが、「寸法」「色」「素材」「縫製」「パターン」すべてに及び、もっと言えば、販売したい数量とか、販売方法とか、そこまで全部まとめて「デザイン」だというのがわかっているようで今よりはわかっていなかった。だから、まずは「形」とか「ディテール」から手を付けて行ったのだと思います。
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当時は製品を作りながら勉強も続けていました。(今もですが)デザインするためには、まずその物自体を良く知る事が大事だと考え、王道のブルックスやハサウェイ。さらに、現行品でもインディビジュアライズドシャツ、ギットマン、アイクベーハー、トムブラウン、バンドオブアウトサイダーズ、ビリーリード。とにかく、「アメリカ製」のボタンダウンをかたっぱしから購入。現物から感じる雰囲気、自分で着た感覚、縫製方法、各部の寸法、ボタンの風合いなどなど。
比較検討して、自分にとって「これは良いな」と思う生地は何か?縫製は何か?寸法は何か?といったように、「良いな」と感じる部分はどんな「規格(スペック)」なのか、検討を続けていきました。
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そうして、徐々にぱっと見は「普通のボタンダウン」。でもWORKERSらしいデザインが随所に込められたシャツが徐々にできていきます。
ただあくまでこれは「その時に良いな」と思ったデザイン。時とともに良いなと感じる寸法も、ディテールも変わる。特に寸法は「時代を感じさせるフィッティング」を実現させる寸法(具体的には当時はタイトフィッティング全盛だったので肩幅が狭く、丈も短い)と「機能として必要な寸法」のせめぎあいでした。
縫製仕様も今以上に「ワークウェアと言えばWORKERS」「WORKERSらしさ」を大事にしたいと思い、脇は細幅の巻縫い。最近定番の極細折伏せ縫いのやり方がまだわかってなかったのもあります。
縫製仕様は工場の設備の制約でもあり、逆にそれがデザインにも感じられる部分。服作りは、単純に「ここは端から何ミリステッチで」と指示するのではなく、「この部分はこのミシンで縫う。この工場には何ミリ幅のミシンがある。製品の品質・テイストにも合致するからこの仕様でいこう」といったように、単純なデザインではない。服作りの文法と私は昔よく考えていました。最初はその文法がわからないから、なぜ古着が、現行品が、そこをそう縫っているのかわからない。
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わからないなりに、自分自身でこのミシンを使うのか?あのミシンなら縫えるのか?この金具を使えば?結局は自分で縫って、わからなければ周りに聞いて聞いて聞いて。でも聞いても中々すんなり答えは見つかりませんでした。というのも、目指しているのはアメリカ製の大量生産的な製品。それに対し、日本・岡山は似たミシンはあっても作る量が全く違う。だから、完全にそれ専用の機械やラインを作るのではなく、ある部分はアイロンしたり、ある部分は金具を使わないで見えない部分をとめて置いたり。「見た目は似ている」けれど「本来の作り方とはちょっと違う」ことも多かったです。
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当時は「なんだ、イミテーションか!」って憤ったりしましたが、今考えると、条件が違い過ぎるから作り方も違って当たり前。
昔だったら大量に作ったから、そのためだけにミシンも、金具も用意できた。
求められる品質も今と違って、金具や専用ミシンを使った結果、多少よれようと何しようとOKな部分も多々。(ただ、現代では出来ないぐらい本当にきれいに縫えてるものもあります。昔のものは何でもかんでもへたくそというのは間違いです)
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デザインは繰り返し同じものを作りながら、徐々に変わっていくものです。
というより変わらないと、時代に合わなくなる。だから、WORKERSのボタンダウンは今でも同じようで変わり続ける。それはパターンも、縫製も、使う生地も。できるまでと言いながら、結局、完成は無いのがデザインなのかもしれません。