白浪五人男・昭和/平成の差


なかなか見たい演目をいつでも見にいけるわけではないので、DVDで見ました白浪五人男。
有名な「しらざぁいってきかせやしょう」です。白浪=どろぼうのお話です。

歌舞伎というと、勧進帳(あの弁慶が松の絵の前でいろいろやって、ひっこむもの)のような、いわゆる能を元にしたもの。

義経千本桜のように、元は人形浄瑠璃を元にしたもの。それと、踊り。

これらは正直、言葉が難しかったり、状況説明を歌でやったりするので勉強しておかないとわからない部分が多々あります。
それに比べて、この白浪五人男は「世話物」と呼ばれる、江戸の日常を描いたものなので、言葉もほぼ現代でもわかるもの。要するに時代劇みたいな感じです。

このDVDは昭和61年、主役?というか、弁天小僧は菊五郎がやってます。
そして、歌舞伎座閉場前(平成22年だっけかな?)のDVDも見まして、そちらも弁天小僧は菊五郎。

同じ演目でも演出が全く違います。
昭和の白浪五人男は、くだけた、現代劇に近い雰囲気。
平成の白浪五人男は、もっと時代がかったいかにも「歌舞伎」って感じでした。

一番の違いは、弁天小僧と面白いかけあいをする南郷力丸。
昭和は初代の辰之助。
平成は当代の吉右衛門がやっています。

菊五郎・初代辰之助のかけあいはなんとも言えず良い感じ。いかにも仲が好さそうで、小悪党がじゃれあうのがなんとも面白い。辰之助がこんなにかっこいいとは知りませんでした。
セリフもすっきり、もごもごしない。何を言ってるかしっかりはっきりわかります。

で、吉右衛門の南郷力丸は、セリフはほとんど同じなのにすごく時代がかって聞こえます。
ちなみに、昭和に演じた辰之助と、平成に演じた吉右衛門はいとこです。それでも、全然違います。

演じている年齢の違いもあるのでしょうが、やっぱり、その人の考え方の違いもあるのでしょうね。
私は、世話物はすっきりわかりやすくが好きです。なので、昭和の白浪五人男のほうが好きだなぁなどと、勝手なことを思いながら見るわけです。



私の場合、趣味を仕事にしてしまっているので洋服の良し悪しや、好き嫌いはどうしても、どこか仕事につながってしまっているので、ただただ無邪気には言えない部分があります。

どんな服だろうと、誰かが素材を作り、生地を作り、型紙を作り、切って、縫って。企画して販売する人もいるわけで、自分もそんな世界に居るので、なかなか楽しみきれないというか。いや、楽しんではいるけれど、「無邪気に」とはいかないのです。

その点、芝居の世界はまったく別世界。それも、点数がつくわけでもなければ、勝ち負けがあるわけでもない。役者さんにしてみれば、興業が成功するかどうかはあるにしても、見る側は関係ありません。

人間、いくら趣味を仕事にしたといえど、ひとつぐらい無邪気に好きだ、嫌いだ言えるなにかがあると息抜きになります。