セルビッジジーンズの型紙。ご覧のとおり、脇はまっすぐ。ここに生地の耳を使うからだ。裾も水平となると、シルエットを作る線は「前内股線」「前中心線」「前ウェスト線」/「後ろ内股線」「後ろウェスト線」「後ろ尻ぐり線」とわずか6本。これらの線だけでシルエットが形作られる。ヨークは単純に切り替え線として機能している。おそらく、生地の必要メーターを減らすための切り替え線ではないだろうか。
今回のジーンズはLot801ストレート/Lot802スリムテーパードの二型。型紙を比較する。シルエットのみがわかりやすいよう、ステッチ線やポケットは消している。外側がストレート、内側がスリムテーパード。まず、股上はスリムテーパードの方がわずかに浅い。また、ワタリもわずかに狭くヒップから前股にかけてのフィット感を重視している。逆にストレートはわずかにゆったりと、腰回りに縦方向の皺が入るだろう。皺=体が動いた時のゆとりだ。立った姿が美しいのはスリム。動ける、作業ができる、ワークウェア的な使い方にはストレートとメリハリを利かせている。
の図は「型打ち」と呼ばれ、生地にパターンを置いて裁断するための配置図。左が86cm巾のセルビッジ生地の場合。約2.6mほどの生地が必要。右は150cm巾の生地をCAM(裁断機)で裁断する場合、1.3m。つまり、セルビッジジーンズを作るには現代で主流の広幅生地の倍近くの生地が必要になる。
今回の生地は「キバタ」。防縮加工のかかっていない生地だ。収縮率は計算上出ているが、上の型打ちを見ても明らかなように、身頃は縦、ヨークは横、帯は縦と、生地の方向がパーツごとに違う。そのため、実際に縫製・洗濯/乾燥させた後にモデルに着用させシルエットの検討と修正が必要になる。
今回のフィッティングではウェストに対して尻ぐりが食い込みすぎるので、若干ワタリ/また上の縦方向の長さを調節している。シルエット検討は収縮率があまり無い製品でも行うが、キバタデニムの場合はさらにひと手間。フィット感や皺、形を確認して「後数センチ、ここを出したい、削りたい」「曲線の形を変えたい」という修正ポイントをさらに収縮率から逆算した数値を型紙上では動かす。