WORKERSの仕事

普段、私がどんな事をしているのかわからない・・・というお問い合わせがありましたので、その一端をご紹介します。

昨日はMapel Leaf Trousersの量産型紙の修正を行いました。



部品構成・・・


今回は、ポケットの口から少し下、ここの厚みを調節します。
まず、Maple Leaf Trousersのポケット周りの部品です。

左から「身頃」、その隣がポケットの口がめくってすぐに袋が見えない為の「見返し」

一番右が「袋布」で、その左、「向こう布」というのが袋布にたたきつけられます。


問題・・・ 厚みとの戦い


まず最初の型紙。ご覧の通り、見返し・向こう布・袋布の端が一点で収束しています。
当初、この程度の厚みであればいけるか?と思い、型紙をひいてサンプルを作成しました。

縫えない事は無い、品質的にも「言わなければわからない」というレベルです。さらに、工場でも適宜、見えない部分の縫い代をそいでくれたりしているので、ある程度はすっきり出来ています。

それでも、もっと型紙段階でうまい工夫をしたい。

私はこういう作業をよく「追い込む」と言うのです。
ミシンの目調子なども同じで「とりあえず縫える」「製品として出せる」の次の段階で「えらい綺麗に縫えている」とか「やりたい事がそのまま出来ている」という状態があります。

そこまで、ミシンなり、型紙なりを「追い込む」のです。
以前は、私が工場で品質管理までしていたので、ミシンの追い込みは自分の目で出来ました。

今は、その部分は工場さんに任せ(ある意味、私より経験豊富な方たちなので)、型紙の追い込みに以前以上、自分の時間をあてています。


見えない部分のパーツを形状変更する


ということで、実際の作業です。

見返しを途中で折れ曲がる形に変更。
向こう布は、底部分をもう少し下げて袋布まであたるように変更。

これにより、それぞれの厚みを分散させるわけです。

以前は、ビンテージそっくりに作る事に注力していました。結果、向こう布が小さくて、袋布がちらちら見えるのもありだったわけです。
ただ、そこから一歩進んで「ビンテージの持つ、独特な雰囲気は縫製・部品で真似しつつも、製品としてより完成されたもの」 を今は目指しています。

そうなると、こういった見えない部分は、何枚も製品を企画し、型紙をひき、現行の既成品も、ビンテージも、いろいろ見て勉強した事から改良していくのです。

もうひと手間、縫い代を工夫する


このように形状変更が終わったら、さらにもうひと手間。縫い代を考えます。
一つ目が、見返しの底部分。表からはほとんど見えない部分です。

折ってしまえば見た目は綺麗になりますが、厚みが出ます。そこで、ここはあえて折らずに断ち切りで縫いつけます。
ロックをかける手もあるのですが(Buckle Back Trousersとか) 今回のメルトンにしろ、チノにしろ、かなり打ちこみが良いので、縫い代を数ミリつければ品質に問題は無いだろうと判断し、断ち切りでつけます。

実際には、カンヌキも打たれるので、よほどポケットの中をめくってみない限り見えるところでは無いので。


さらに、向こう布も中に入ってしまう縫い代部分を落とします。

量産型のノウハウ・・・

と、今日やってきた作業は俗に「量産型」と呼ばれる、量産するときに問題が起きないよう。
より、すっきりと仕上げるための作業です。

通常、デザイナーは絵を描き、パタンナーがそれを型紙にします。
さらに、その型紙もいわゆる「上がり」と呼ばれる、形状をデザイナーの絵に近付ける作業と、それとは別に「量産で縫える型紙にする」作業があります。

うまいパタンナーは、そもそもどう縫うかまで考えて、フォルムから作っていくのです。

で、この「量産型」にするのは、パタンナーより工場の作業だという意見もあります。
確かに、イタリアブランドなどで、工場にパタンナーが居て、その工場ですんなり縫えるよう、見事なパターンをひいている所もあります。


ただ、それは工場=ブランドをしているからであり、中々、相手先ブランドの製品を作る工場に専属パタンナーを置いてもらうのは難しいのが今の日本の現状です。

では、どうしたら量産工場の設備まで含めて理解したパターンをひけるのか。
それを学ぶためもあり、私は最初に工場に飛び込んだのです。

現場でミシンを見て、アタッチメント(金具)を見て、何枚も既成品を見て、縫える・縫えないのカーブを判断できるようにする。

もちろん、自分でもひいて縫ってみないとわからないので、量産の巻き縫いミシンや、平は家に用意して何回もひいては、裁断・縫製してみました。

ただ、これだけ勉強してきても毎回、細かな修正は必要です。それが今日のような作業になるのです。この作業をする事で、また次、同じ生地で似た仕様をやる時にはノウハウがたまっているのです。

より良い、より「追い込んだ」製品を作るため、日々、作業をしながら勉強を続けています。