モデルを待ちながら


楼門五三桐で、前猿之助が復帰したそうで。
南禅寺の山門は数年前は登れて(今はわかりませんが)確かに絶景かな絶景かなでした。

山門の上から


いきなり何の話と思われるかもしれませんが、私、学生時代は歌舞伎が好きでほぼ毎月見ていました。

大学に入って、バイトもして、行動範囲も広がって、今しかできないことが何がしたい?と考え「芝居が見たい」と思い立ちました。

芝居といっても、当時本当に見たかったのはいわゆる小劇場。劇団新感線が見たかったのです。
高校時代、夜中のBSで見た「野獣郎見参」ですっかりはまり、粟根まことに恋をしたわけです。(恋といっても、変な意味ではなく、単純にかっこよさに惚れたのです)
自分で勝手に行けばよいのですが、やはり最初はなかなかその一歩が踏み出せません。
そもそも、その芝居が新感線という劇団がやっていることすらわかっていませんでした。

芝居を「やる」サークルは数あれど、芝居を「見る」となるとあまりありませんでした。そこで入ったのが「歌舞伎研究会」 その名の通り見るだけのサークルです。

私の伯父がこのサークルに何十年か前に行っていたので、名前だけは聞いておりついトイレの横にあった部室に入り、居ついてしまいました。

今でこそ、チケット代は少し上がりましたが、当時の歌舞伎座は三階B席は2520円。幕見席という、一幕だけ見る席もあり、そこは1000円するかしないか。

で、ほぼ毎月見ていたのに、ちゃんと覚えているのはいくつもありません。
金が無くて、筋書き(パンフレット)を毎回買っていなかったのも悪かったです。

確か、最初か二回目に見に行った三人吉三、平成の三之助が出ていました。それと、いきなり道成寺かなにか見たので「なんと退屈な・・・」と思ったのは覚えています。

ただ、四月からみだしてすぐに五月の団菊祭、団十郎・菊五郎の出る公演がありました。
そこで、菊五郎の和事(江戸の市井を描いたわかりやすいもの)を見て、ぐっと引きこまれました。
が、その演目を覚えていないのが馬鹿ですね。

伯父がラマンチャの男を通じて惚れていた幸四郎は、その後、俊寛やら寺子屋あたりで見たのですが、やたら話し方がモゴンモゴンしていて好きになれず。和事やっても、妙にモゴンモゴンしてますし。

7月と12月が確か猿之助で、サークルの先輩(若年性年寄りみたいな、20そこそこで漬物で日本酒呑むような)あたりは、やっぱり伝統的なのが好きなので「猿之助なんて」といった感じでしたが、私は毎回楽しめました。

宙乗りがあると、三階B席でもよく見えました。(三階B席だと花道は見えません。なので、勧進帳の飛び六法はいまだ生で見たことが無い・・・)

と、ヤフーニュースで見た、猿翁復帰からついいろいろ思い出してしまいました。

学生後は、本格的洋服修行の身なので10年間、芝居は我慢をしてきました。
それでも、最近は出張の合間を見つけて少しづつ見るようになってきました。先月の義経千本桜は、久しぶりにぞくっとなる感じを得られうれしかったです。最後の「はや、おさらば!」が、先代の猿之助に似ているんだけど、違って、なんとも言えずぐっと来ました。

芝居は、見に行っても毎回当たりというわけでなく、何回かに一回、ぞくっとなるほど陶酔できるときがあります。あれがあるから、麻薬のように止められなくなるのです。