海上輸送された綿は日本の綿輸入商社の倉庫に保管される。アメリカだけでなくオーストラリア、ペルー、インド、ジンバブエ、中国、世界中からそれぞれ個性の違う綿が輸入される。最終的に作る製品により同じ「綿」でも求められるスペックが違うためだ。
本番の紡績(糸作り)の前に試験紡績を複数回行う。今回は、目指す糸形状を再現するため古着を解体し、そのムラ形状をスキャン。古くは、紡績の工程すべてが未熟であったためできてしまった糸太さのムラ。これを現代の技術であえて再現している。
混打綿~梳綿~練条
糸のムラ形状も決まりいよいよ量産紡績が始まる。まずは「開俵」。圧縮されパッキンに詰められた綿を開く。その後、適度な温度・湿度に保たれた部屋で一昼夜程度置くと固く引き締まった綿が緩んでくる。これにより、後の工程で葉カスを取り除いたり、ヨリをかけたり がしやすくなる。右は綿を空気で上に巻きあげ落とす事を何回も繰り返している。ジンで取り切れなかった葉カスや枝など、汚れをできる限り取り去る。
ロール状にまとめられた綿は「梳綿(カード)」という繊維方向を揃える工程に入る。櫛を使い一定方向に成った繊維がシート状になり、最後は撚りのかかっていないロープ状の「スライバー」になる。さらに、後の工程へ動かしやすい下にローラーがついたドラム缶のようなケースに収納されていく。
スライバーを縒り合せる練条。山忠紡績では7束のスライバーを一つに、さらに8束を一つに。結果、7×8=56本のスライバーを1本にまとめ、繊維の短い・長い/太い・細い部分を均整化する。できる限り均一な繊維の束を作る工程。
粗紡~精紡~コーンアップ
練条後の繊維は缶に入れられ別フロアへ運ばれ、繊維をさらに引っ張りわずかに撚りをかける「粗紡」工程に。その後、持ち運びがしやすい形にまき直され、いよいよ糸になる精紡工程へ運ばれる。
粗紡で巻き取られた糸になる寸前の状態が上につりさげられている。ここから下に向かって精紡機を通り、我々が指定したムラ形状、糸番手(太さ)の糸が作られる。現代では、この精紡機のコントロール部分が電子化され様々なムラ形状をここで作り出すことが出来る。古くは、ここまでの工程がすべて未熟であったためできて「しまった」ムラをあえてこの精紡で再現している。
完成した糸は「コーンアップ」という巻き直しがされる。精紡後の糸自体は精紡機の下についている管に巻かれ、約1200ヤード=1100メートル程度の長さ。これを「コーン」という紙管につなぎながら巻きなおす。1コーンあたりの重さが約1.89キログラム。今回の7番糸の長さに直すと約24500ヤード=22400メートル程度になる。